冬。外は結構風が強い。
寒いのかな。殆ど道には人が居なくて、私も、その中の一人。





もの、いだいて





「よ」
「…誰かと思った」


あんなことを考えていた最中になった呼び鈴に、私は耳を疑ったほど。
ドアを開けたら、見覚えのある、しかもずっと見ていた、見ていたかった、見たかった、顔。
洋は例外だったみたい。


「寒ー」
「わざわざ家出てきたくせにー」


のそのそと部屋に入る洋を見て、私はヒーターの温度を高めた。


「なんか飲む?」
「うーん…」
「紅茶と、ミルクと、ココアと、コーヒー…」
「コーヒー」
「あ、ごめんなかった」


なんとなく、「てへ」とかやってみた。


「…どした?」
「うん、なんとなくだよ」


じゃあ、飲み物はいいや、と呟いてソファに座る洋。
私はホットミルクをいれて、マグカップを両手で持って洋の隣に行く。





振り向くと、洋は手を差し出していた。
とりあえず、その手を握ってみた。
すると、そのまま手を引かれて私は、洋に抱えられるような体制になる。
後ろから、抱き締められた。


「寒い」


ここは黙っておくべきかな、と思って黙っていたら、洋も黙り込んじゃって。
しばらく、自分の鼓動と風の音とヒーターのモーター音しか聞こえなくなった。


「…


声を聞くとぞくっとする。まるでノイズのように。不快感はないけれど。
耳元で聞こえる声。大好きな彼の、大好きな声。


「…ベースにもこうやってたの?」
「何で?」
「なんか、愛するためにそうしたら良いって本に書いてあった」
「…マジで?別にそこまでは…」
「そっか」


あまりにも速い鼓動の音を聞くのが耐えられなくなって、なんとなく思いついたことを聞いた。
その答えに、じゃああの本の書いてあったことは間違いだったのかな、なんて普通に考えて。
私はまた洋に身を委ねた。


「…でも」


少し緩められていた腕が、強く締まって。


「愛するために、抱いてる」
「いだいて?」
「愛してるから…か」


また強く、更に強くなって。


「大好きだよ」


大好きな人に抱かれて、更に、好きになる。










* FIN










-月下よりお礼の言葉-
幸恵様より相互記念です。
洋で甘いのをリクエストしたんですが…
きゃー。やばい、こういうの大好きなんです。
幸恵サン本当ありがとうございます!!!これからもよろしくお願いします。