抱 き し め た ?
3月、君は。
#4 そしてクライマックス。
「外間…先輩?」
わたしは外間先輩に抱きしめられたまま、何が起こったのか分からないままでいた。
先輩に声をかけると、先輩はわたしの耳元で囁いた。
「ボタンじゃなくて良いなら、 俺 が残ってるんだけど…いらない?」
「え…?」
「俺、の事好き。」
外間先輩はわたしの正面に立って、わたしの顔を覗き込んだ。
わたしはやっぱり、何があったのか分からないまま、呆然と立ち尽くしていた。
雨の音がクリアになって、先輩の声がはっきり聞こえた。
「あの…?」
「…。俺と付き合ってくれない?」
「は…あの。」
「返事は?」
「え…と。」
「よろしくおねがいします」
「…よくできました。」
そう言って離れた外間先輩は、自分で言ったくせに真っ赤になっていた。
「先輩、真っ赤ですよ」
「う、うるさい!」
「どもるなんて、廣山先輩にそっくりじゃないですか。」
「う…」
自分ももっと赤くなっているだろうから、照れ隠しにいつも通りに振舞う。
そしてその後、先輩がわたしの手に何かを握らせた。
開いてみると、それは “ 外間弘樹 ” と書いてある名札。
「名札…?」
「あのさ、第二ボタンって、戦場に行く兵士が心臓に一番近い場所にあるボタンを妻とか愛する人に渡したことが始まりなんだって。」
「…はあ」
「んで、ボタンはもう無くなっちゃったけど、名札の方が心臓に近いから…の為に取っておいたん…だけど。」
…先輩らしいです。一本取られました。
名札は、ありがたく頂く事にした。
「先輩、ありがとうございます。」
「…先輩じゃなくて、弘樹って呼んで良いよ」
「…はい。」
二人とも真っ赤になって、手を繋いで家まで帰った。
弘樹がわたしを抱きしめたときにわたしの傘は手から離れて飛んでいってしまったため、二人で相合傘で。
「…」
「はい?」
「かっちゃんに何か言われた?」
「…イエ、何も。」
「そう…?」
…今は、話さないでおこう。北尾先輩が怖い。
-END-