会いたくて、会いたくて、
んー…
コレは、ヤバいなぁ。
もう一週間も、弘樹に会っていない。
私はまるで禁断症状が出たように貧乏ゆすりが止まらなかった。
もちろん、こうなる事はちゃんと分かってて、メジャーデビューの時も弘樹を応援してたのに。
あぁ、つくづく嫌な女だ。
―僕等はいつも以心伝心〜♪
携帯から弘樹の声(着うただけど)が聞こえて、私は飛び上がった。
携帯を手に、通話ボタンを押そうとするけど、
別れ話だったらどうしよう、なんて意味も無い心配をして、なかなか押せない。
ディスプレイに表示された「弘樹」という字を見、着うたの弘樹の声を聞いたら、
弘樹の笑顔が思い出されて。
別れ話でも良いから、話がしたい。
そう思って、ついに通話ボタンを押した。
「…弘樹」
『おー、。元気だった?』
「うん」
泣きそうになっている自分を抑えながら、
電話の向こうにもばれないように、話を続けた。
『おーい、?』
「ッ…ごめん」
『おいおい、人の話は聞きなさい。つーか…』
「…ん?」
『大丈夫ですか、涙声ですよ。』
“彼女の事になると弘樹は意外と鋭いんだよ”
って言ってたの、かっちゃんだっけ。
電話の向こうの弘樹の声は、ふざけているような調子だったけど、どこか優しく、包まれるような。
CDで聞くのとはちょっと違う声だった。
「弘樹…」
『ん?』
「いつ、会えるかな」
嫌な彼女だな。
今ツアー中の有名なミュージシャンに、会うことを催促するような。
そんな酷い女、振られても文句は言えないよ。
電話の向こうが少し静かになったので、私は急いで言葉を続けた。
「嘘だよ。今ツアー中だもんね。いくらなんでも『すぐ』
「…え?」
『すぐ、すぐに会えるから。』
「すぐ、って…」
『とにかく、すぐ。絶対すぐ会える。』
何を言ってるんだろう。
疑問に思ったけど、その後弘樹が用事があるって言ったから、電話を切った。
すぐ…か。
―ピンポーン
その時、いきなりドアホンが鳴って、私は飛び上がった(2回目だよ、もう)
「誰よ、もう…」
―ピンポンピンポンピンポーン
「はいはいはーい。」
ちょっと不機嫌になりながら、ドアを開けた。
と、その瞬間に誰かに抱きしめられ、呼吸が止まりそうになる。
「だから、すぐ会えるって言ったじゃん、な?。」
「…弘樹?」
私を抱きしめたまま、弘樹は軽く笑った。
-end-