聞こえる雨と足

























































自分で言ってなんだけど、もともとあたしにこんな悪趣味なことは似合わないとおもう。
薄い壁で隔たれた教室の中から聞こえてくる声を、
只立ち尽くして廊下で聞いている。
どれ位の時が過ぎたんだろう。
制服のポケットに入れた携帯の明かりが、布越しにかすかに光をあたしの目に届ける。
長く感じる。
それが長いのか短いのか、あたしには分かんない。
外は雨。廊下の窓からも光が弱弱しく入ってあたしの足元で消えてる。
教室側の壁にもたれかかって、音を立てないようにしゃがみ込む。
またあたしは、かすかに聞こえる声に耳を傾けた。
ああ、全く悪趣味。




「去年の体育祭の時も、文化祭の時も…」
「うん。」
「ずっとあなたを、外間君を見てました。」




長い台詞をだらだらと続ける女生徒。
どうせ最後には「好きです」というありがちな台詞を言うんだろう。
たぶん、それには男子生徒も気付いている。
でも、何も言わない。
よくもこんなに臭い台詞、聞いてられるね。
それは彼もその女生徒のこと好きなだからなのか。
それとも、ただ雰囲気に流されて、何も言えずにいるのか。
無意識に後者である事を願ってしまうあたしは、外間のなんなのか。
あたしは、只の外間のクラスメイト。只隣の席で、只、外間の事を好きなだけ。
只ちょっと他の女子より外間と仲がいいってだけで、あたしは勝手に思い込んでいたのかもしれない。
外間はあたしのだ、って。そんな訳無いのに。




「…」




教室内に響く女生徒の声が止まり、ひと時の沈黙。
部屋の中の重苦しい空気は、ドアの隙間を伝ってあたしの所にも流れてきた。
やだ。
いわないで。
好きです、なんて。
そんなこと言わないで。
あたしの大好きな外間に。






そして、あたしが来ないことを祈っていた瞬間は、来てしまう。




「好き…です。」


「俺…あの…」








あたしは知っている。
外間が2週間前、幼馴染みの廣山に、「あの子いいよな」と言ってたこと。
そうして廣山と同時にあたしの目が見た「あの子」が、
今外間に「好き」と言った子だと言う事を。








あたしは走り出した。
もう、足音が外間と「あの子」に届いてもいい。
外間が「あの子」に返事を出す前にここを離れないと。
あたしはきっと狂ってしまう。































「俺…あの…好きな奴が、いるんです。」


「え…」


「そいつ、凄く生意気で、頑固で。ワガママな奴なんだけど。俺が傍に居てやらないと。」


「…それは」


「俺の隣の席の奴なんです。」


「…あぁ」


「だから、あなたとは付き合えない。ごめんなさい。」


「…はい。」


「じゃあ、そういうことなんで。」




俺は教室を飛び出した。さっき聞こえた足音は、確実にあいつのものだ。
俺には確信が、あった。階段を駆け下りる途中、あいつの小さい背中が、踊場で震えているのを見た。
一歩だけ進んで、あいつと同じ高さに立って、声をかけた。




「…なあ、」