プレゼントは










































窓の外はいまだ薄暗く、時計の短針は数字の「4」を指していた。
それによって私は、今が早朝、4時頃なのだと知った。


目の前のガラステーブルの上には、隅のほうに弱々しく緑と赤が点滅しているノートパソコンと、細かい数字が所狭しと並ぶ書類が乱雑に置かれている。




(…寒)


身を預けている固めのソファ、それと首筋に当たるクッションは驚くほど冷たく、ぼんやりとしていた思考が一気に目を覚ました。


昨日の夜、たしか弘樹が10時ごろ帰ってきて、「疲れた…」とか細い声を上げてベッドに倒れこみ、そのまま眠りについた。
そして一人残された私は、ソファで仕事を片付けようとしたものの、すぐに眠ってしまったんだ。そのまま。
夏といえど、部屋着である薄手のワンピース一枚で布団もかからず一夜を過ごすなんて。
阿呆らしい。




私は、今身につけているお気に入りの中国風ワンピースを、すこし恨む。
ノースリーブに、透けないがかなり薄い(おまけに冷たい)生地で作られたそれは、夜露に濡れたように冷たさを増していた。




(…弘樹んとこ行こ)


手始めに何か羽織れるものを、そう思ってあたりを見回すも何も無い。
私は仕方なく冷たく重く感じられるワンピースをしゃらしゃらいわせながら寝室のドアを開けた。


ベッドの上では、弘樹が首を少し上げてぼんやりと私を見、そして言った。




「おいで。」


布団の端を持ち上げ、私が入るスペースを開ける。
いつもなら躊躇する私も、寒さに負けて素直に、弘樹の隣に入った。
弘樹が布団をぱさ、と落とす。
あたたかい。




「違う。こっち。」


腕を引っ張られ、気付くと弘樹の腕の中にいた。
さっきより数倍あったかくて、顔が軽く火照るのを感じた。




「ちょ…弘樹?」


「んー……」




寝ぼけているのか、いつもより甘く、掠れた声を出す弘樹。
と、はずみなのか丁度腰に手を回され心臓が跳ね上がった。
“どきん”なんてもんじゃない。
それはもう身震いのするほど。






 ぞくっ      と。




「ひろ…」




聞こえてくるのは、弘樹の静かな寝息のみ。
いつも彼がそうするように、私は弘樹の胸に頭を引き寄せられている。
だから、顔を上げないと十分な酸素が得られない。


―これ、恥ずかしいからやなんだよね、実は。


上を向くと、弘樹の優しい寝顔と、柔らかそうな髪が見えた。
眠っているくせにかなり強い力で抱きしめられている。私は体をよじり、
やっとの思いで腕を引き抜き、弘樹の髪を撫でる。


と、弘樹の頭越しに、時計が見えた。(あの、ぱたんってなるやつ)




2005/06/29  04:42




…あ、そっか。




「弘樹、誕生日おめでとう。」


私は、弘樹の頭を撫でながら言った。
と、ふいに弘樹の私を抱きしめる力が強くなった気がした。
ワンピースの中国刺繍が、しゃらんと音を立てた。




「覚えてたの、?」


「いま、時計見て気付いた。」




にゃー!!!と、猫みたいな声をあげて弘樹が、私の頭をくしゃくしゃとなでて、おでこにキスをした。




「プレゼントは?」


「買ってないや。あたしでいー?」


冗談めかしてそう言うと、柄にも無く弘樹は顔を赤くする。
 ― あれ、弘樹のことだからニヤけるんじゃないかなとか思ってたのに。




「…、俺の事だから凄い嬉しがるとか思ってんだろ。」


「え、まあ。」


…ビンゴ。鋭いね君。


「女、から言われたらどきっとするもんなんすよ…」


「へー。意外。」


…女、で一回詰まった気がしたんだけど。


「…いいや。今日はおうちでまったりデート。」




でも、どっちにしろ今夜あたり、私がプレゼントになることほぼ確定。


少し早まっている弘樹の鼓動を聞きながら、私はそう思った。












-end-








10分間に合わなかった…!!!
名前変換の意味なし。小説自体も意味なし。
ついでにちゅー無し 何
というびみょーな誕生日夢でした。
ハッピーバースデー☆