シャーペン回し


































がらりと、教室のドアが開く。
こんなに大きな音を立てるドアを作らなくてもいいんじゃないかと、首を傾げた。


・・・まあ、いつものことなんですけど。




「あれれれれ、ちゃん。」




その苗字にちゃんをつける呼び方はどうも理解しがたいんだよね。
ふつーに呼び捨てにしてくれればこっちも楽なのに。




「おーい、ちゃん?」
「聞こえてるよ」




とは言ったものの、だーいすきなハスキーボイスで苗字を呼ばれる、ただそれだけでも嬉しい。
なんて。




「え、なにこのプリント。」
「まあ、見てのとおり?」
「うっそ、ホシュー?めずらしー」




珍しくもなんともないよそりゃあーた。
あたしの面倒臭がりな性格じゃ、数学のプリントなんざやってくるわけないでしょーも。


目の前に広がっているプリントの山。
上から犬みたいなかわいい目でそれを見下ろす外間。
んでもってシャーペンくるくるしてるあたし。




「まあ、てなワケで外間、手伝ってちょ」
「ちょとか言うキャラかよ」
「外間数学得意じゃん」
「俺文系だし。つーか得意科目保健ですから」
「うわ」




なんだよーとか言いながら正面に座る。
あ、そこなおとりんの席。




「俺さー、そのシャーペン回すのできないんだよね。」
「ふーん」




意識してるわけでもなく、命を持ったように指先で踊るシャーペンにほんのすこし愛着がわいた。
いや、冷静になってみればあたしが回してるんだけどね?




「じゃーさ、これ教えてあげるから、プリント手伝って?」
「おめーさん世渡りがうまいねえ。」


んじゃ、はい。
そういいながらプリントの山の7割ぐらいを外間の方へ押しやる。


「多すぎ!いくらなんでもこりゃーむりだよちゃん!」
「はいつべこべ言わずにさっさとやるー」
「だって確実に俺のが多いし!」




あたしは外間を無視してプリントに目を戻す。
上から3,4問なら分かるんだけど・・・




「あ゛−、やっぱむり!外間全部よろしく!」
「えー!えー!」


いやいやいいながらも眼鏡をかけてプリントに手をつける外間。
あんがい、良い奴。




「ねー、回すの教えてあげるからさー、お礼くれない?」
「プリントやってるじゃん」
「そうじゃなくてさー・・・」


「ちゅーがいい?」




外間が身を乗り出したかと思うと、あたしの唇に軽く自分のそれを押し当てた。
うわ、どーしよう絶対まっかだよあたし・・・!




「・・・まだ教えてないじゃん」




「・・・前払い?」










外間の手にあるシャーペンが踊るようになったころ。


窓の外では星も踊ってた。








-end-






おひさしぶりんこ☆死
リハビリ作です。ひろき。
なんかいろいろ見苦しいけど見逃してください・・・!