ホリデイ  HIROKI

















あー眠い。
新曲のレコーディングもひと段落して、あとは直人に任せるだけ。
直人以外のメンバーは明後日の昼まで、休みをもらえた。
俺は家についてもニット帽を被ったまま、ソファに突っ伏した。


「ちゅーとはんぱなんだよなー、休みが」


呟いても誰も何も返さないワケだが。
と、いうかこの家、一人くらい家族がいてもいいんじゃないか!?
久しぶりに帰ってきた長男をもっと手厚く歓迎(?)してくれてもいいだろ!?


「どーせなら一週間欲しいよな」


返事などなくても、俺の独り言は止まらない。
大和とかに散々根暗って言われる理由が分かったかも。


は何してんのかなー」


床に放ってあるリモコンを取ろうと手を伸ばす。
届かない・・・


「あと、もう、ちょっ・・・うがっ」


身体を伸ばしすぎたのか、ソファから転げ落ちる俺。
ズキズキと痛む頭を抱えながら、テレビのスイッチを入れる。
・・・と、あれ?
主電源入ってねーじゃんかよお・・・!
とことんエコだなうちの家族は!
床に落ちたうつ伏せの姿勢のまま、テレビの前まで移動していく俺。
ああ、メンバーとかスタッフが笑いながら俺を見ている光景が目に浮かぶよ・・・


「ひかりをさーえぎーるもーやもーやもおー」


テレビの主電源を入れ、チャンネルを回す。
適当なバラエティにして、首だけソファに向ける。
・・・遠いな。うん。
とりあえずそこまで戻る気力もないので、この場で仰向けになる。


「こころをーうーろちょろーしてるふーあーんーもお」


瞼が重い。


ピンポーン


「あさのめざめーのいっ・・・はーい?」


チャイムが鳴ったので、俺はその場で大声で返事をする。


「弘樹っ、あたし・・・」
「え、!?」


愛しい人の声が聞こえる。
俺はさっきまでの疲れは何処へ行ったのか、ほぼ全速力で玄関へ向かう。
鍵を外し、ドアを開ける。
そこに居る愛しい人の小柄な身体を、思いっきり抱きしめた。
あー、の匂いだ


ー!俺マジね、寂しくて死にそうだったんだよ!てか明後日までお休みもらえたの!でも家族誰もいないの!俺のことかまってえー!」
「・・・」
・・・?」


大和ばりのハイテンションで喋り終えた俺。
ふとを見ると、俯いて肩を震わせていた。
えっ、俺!?俺泣かせた!?!?


「ちょっ、、どした!?」
「・・・」
「俺、なんかしたならごめん!・・・とりあえず、中入ろ??」
「・・・こ」
「こ?」


は唇も震わせながら、俺に抱きついた。
いや、嬉しいけども!嬉しいけど、奥さん!!
なんで泣いてんのよ!?


「怖い映画・・・見ちゃっ、た、の・・・」
「・・・はひ?」


そういえば、は幽霊だとかオカルトの類が全然ダメなんだ。
霊感のあるカッチャンとかスタッフが怖い話してたときとか、目を真っ赤にして俺にしがみついてたな・・・
そーいやあん時、俺マジ限界だったんだな。
いや、俺っつーかジョンが。
俺も若かったな(ジョンも)。
そんなことを考えてると、は潤んだ目を俺に向けて震える声で言った。


「お風呂・・・ひとりじゃ入れないから」
「・・・!」
「ひとりで寝るのやだから・・・」
「えっ、それって」
「今日、泊めてください・・・」






いやー、俺もまだまだ若いな(ジョンも)!










Fin.