女にも理性ってモンがあるの。


















ブラックエンゼル






























あー…眠い。
だって、いまは数学で、先生が数字の羅列(式なんだろうけどわたしには只の羅列に見える)を黒板に書いてるし、
わたしの席は窓際の一番後ろという素敵な場所にあって、寝てもバレないだろうし。




本当寝ちゃおっかな…
肘をついて、その上に顔を乗せて外を見る。雲があるけど透明な青い空。
キレイな空…。




「…わたしとは正反対だな」




否、別にわたしの心は濁ってる訳じゃないけど。
なんとなく…何処かの少説のそんな台詞が頭に浮かんだ。
小さく口に出して唱えてみたら、なんだかしっくりきてぞくっとした。
その台詞が気に入ったわたしは、小さく笑って顔を腕にうずめた。


悲劇のヒロインを気取って、悟った顔をしてノートに「悲シイ。死ニタイ。」と書きなぐった。
別にそんなこと思ってないけど。むしろ楽しい。
きっと少説の中のヒロインって、心の何処かで悲劇を演じる自分を楽しんでいるんだ。




わたしの席の隣は北尾君。やっぱり人気のある、可愛い(でも格好良い)男子生徒だ。
とりあえず北尾君に、小さな声で「ね」と同意を求めようと、横を見た。




「う…わ」




わたしの口から出たのは「ね」ではなく。
ため息と感嘆の声。
だって…
こんなきれいな顔で寝る人はじめて見た。
いつもと同じように口元は少し微笑んでいて、華奢な長いまつげがたまに震える。
髪も…よく色を変える割にはサラサラで…天使ってこんなだろうな、なんて思わせる。


すこし悪戯したくなって、窓を開けた。
北尾君の開いたままの真っ白なノートのページがパラパラと音を立ててめくれる。
紙の端がたまに北尾君の顔に当たって、北尾君は顔を歪めて小さく声を立てる。




「んー…」




ヤバイ…かも。
別に私は北尾君の事好きなわけじゃないと思う。
けど…けどさ、これはマズイって。可愛いし格好良い…。
女にも、理性ってモンがあるんだよ…!
音を立てないように忍び寄って、頬に軽くキスした。
周りにはバレてないみたい。北尾君は「んっ…」とまた声を上げて顔を腕に埋めた。






わたしも寝ないと、北尾君を襲ってしまいそうだ。(この時点でわたし相当変態…)
お…やすみ…。










....................






周りの騒がしさで目が覚めた。目を開けると、白いノートが目に入った。
今何時なのか確認するため顔を上げると、目の前には天使が。




ん?天使…?




き…北尾君!!!?




わたしの理性を切れさせた男、北尾君が目の前に居た。
やー…間近で見ると相当キレイだなー…って違くて!!!






「き…北尾君?」


「そう。かっちゃんで良いって言ってるのにー。」


「いや…アハハ…」


はどーして死にたいの?」


「えっ…?」






北尾君の目線の先には、わたしのノート。
「悲シイ。死ニタイ。」という文字が嫌に目立っている。
わたしは慌ててそれを隠した。






「違う…!」


「何が違うのー?俺にキスした事?」






知ってる…!!!?何で、なんで、ナンデ!!!?
俗に言う以心伝心って奴!!!?…違う!何言ってんのわたし!!
わたしが一人でパニクっていると、北尾君が微笑んだ。






「良いよ。俺もにお返ししたから。…唇にね。」






北尾君は、最高に黒い笑顔で言い放った。








-END-










私のカヅ氏は…あれだ。なんか中途半端に黒い。
ワンパターン。