大げさな話と嫉妬










































私の携帯から「ミチシルベ」が流れてきたら、カズからの電話の合図。
ワンフレーズも終わらない内に、私は通話ボタンを押した。




「もしもし」


『洋だけど』




電話の向こうから聞こえて来たのは、カズではなく洋の声。
一週間会えてないから連絡してくれるかと思ったのに、ちょっとがっかりした。




「え…どうしたの?」


『ごめん、細かい説明は後でするから。とにかく急いで山公来てくれるかな。』


「いいとも。」








........................




山公につくと、直人が手を振りながら走ってきた。
さぞ笑顔なんだろうなと思っていたのに、近くまで来た直人の顔はむしろ怯えているような顔。




「直人、どうしたの?」


「よかった、早く来てくれて。かっちゃんが…」




そこで、直人は言葉を切って、後ろを振り向く。
それにつられて私もそっちを見ると。


バスケのゴールの下に、洋と涼がいて、その間にカズがいるけど、ボールを抱えて凄い不機嫌な顔。
少し離れたところに、大和と弘樹。大和は今にも泣き出しそうな顔をしてて、弘樹も頭を抑えてる。




。待ってたよ。」




いつにも増して黒い笑みを浮かべたカズは、私を手招きした。
嫌な予感を感じて私がそこに行くのを渋ると、直人が焦った声で早く、と言って背中を押す。


結局ズルズルと直人に押されてカズの前に立つと、カズが私の手を引いて、目を合わせて言った。




、大和と…遊びに行ったの?」








「…は?」




「だから、遊びに行ったかって聞いてるの。」


「行ったっつーか…」




私が口を開きかけると、涼がそれを制し。
洋が不機嫌なカズをなだめながら直人と涼に視線を送り。
それを受けて二人は私をすこし離れたところに引っ張って行って、私に説明を始めた。




その内容をまとめると、こうだ。


今日一日オフになった皆は、珍しくここ山公でバスケをしていた。
只バスケをするのもつまらないという直人の提案で、2人一組で対決して、3位の組は1位の組に対して何かを暴露するというルールになった。
その結果、大和と弘樹が負けて、カズと洋が勝ったんだけど。
大和と弘樹がカズに向かって暴露した内容が問題。




「…で、その暴露の内容は?」






「大和が、先々週とデートしたって」


「はあぁぁぁっ!?」






それで、その続きはこう。


その暴露に怒ったカズが、弄んでいたボールを大和に投げつけて。(しかもキッツいスピン付き by涼)
大和の頭にまともに当たった。ついでに跳ね返って弘樹の頭にも当たった。


で。
カズが不機嫌になって、涼と直人がそれをなだめている間に洋がカズの携帯を使って私に連絡を入れた、というわけ。






「かっちゃんをどうにかしてくれ…」


「あれじゃいつ俺らにとばっちり来るかわかんないんスよ…」


「そんなこといっても…」




今度は、涼に引っ張られてまたカズの前に立たされた。
(なんか、私が一番弄ばれてる気がする)




「あ、あのー…ね、カズ?」


「何?」




せっかく勇気をふりしぼって声をかけたのに、カズに軽く睨まれて、私はまたたじろいだ。
(涼と直人が小声で早く!と言った)




「あの…大和と遊びに行ったっていうのは、ね」


「…」


「多分、CDショップで鉢合わせして、そのあと少しだけ一緒にお店を見て回った事なの。」


「…」


「(こわい!)だ、だから、デートとかじゃ、無い、の。」






最後は、一言一言をゆっくりと、カズの目を見ながら言った。
カズは、眉間に軽くしわをよせて、大和の方をキッと睨んだ。(大和もう泣きそう)




それから、私の方に向き直って、私を抱きしめた。
耳元で、カズの間延びした、ちょっとトゲのある低い声がした。









「…ハイ」


「今度は、許さないからね。一緒に店回ったりしないこと。」


「…は?」


「それから、もしも一緒になったりしたら、全部俺に報告する事。いいね?」


「…ぐ」




言葉そのものは疑問系なものの、有無を言わせないような口調で、カズは言う。
それに私は、頷かざるを得なかった。
自分の彼氏ながら、やっぱり、こわい。




「俺、のこと愛してるんだから、心配かけないでよ。」










最後の言葉は、ちょっと、いやかなり、




嬉しかったけど。








-end-










ちょい黒…っつーか拗ねカッチャン。
ほっぺプクーなイメージ。何