ブラウン管から聞こえる貴方の声は






































午前11時。光が入りにくく薄暗い部屋の中で、私は目を覚ました。
今日は休み。…私は。


直人は、今日も仕事。
昨日の夜、二人で眠りについたハズのベッドに、直人のぬくもりは無かった。
私の隣、直人の枕の上に、書置きがあるのを見つけて、私は手を伸ばした。







俺、今日も仕事。ごめん。
夜には帰れると思うけど。
何かあったら電話してもかまわないから。
  直人』




「なお…と」




見慣れた直人の字が、涙で滲んだ。
黒いインクが、灰色に流れていく。


私は涙を拭いて、布団に入ったままテレビをつけた。
ちょうど、ニュースの特集でレンジが紹介されていた。






“こんにちわー”


“今日は朝早くて…”






たまに聞こえる、少しどもった声。
部屋の中で、そこだけ生きてるように光るブラウン管に目をやる。
直人が、一歩後ろで少し下を向いていた。帽子を少し深めに被って。




直人の声を、直人を、ブラウン管越しに感じるたび、涙が滲む。
涙を拭いても拭いても、次から次からあふれ出てしまう。






―ほら、。泣き止まなきゃ。部屋の中水槽になったらたまんないでしょ。






「無理だよ…っ…むり…だよ…直人っ…」






直人の言葉が脳裏に浮かんでも、涙を止める事はできなかった。
薄暗い部屋に、わたしの弱弱しい声とテレビからの音が響く。
テレビを消して、携帯に手をやった。




「めいわくかな…」




直人の番号を呼び出して、通話ボタンの上で指が止まる。
いつも「いつでも連絡して」って言うけど、きっとめいわくなハズ。
直人の優しさも、自分への嫌悪感も、涙と共に目の奥に浮かんでくる。








「ばいばい…なおと…っ」






むなしく響いた声を残して、私は直人の部屋を出た。










-END-










ごめんね…どうしよう。テレビに映る彼氏を見て悲しくなる、ってのを書きたかったんだけど。
オチが変だし、矛盾点がいっぱい…ってあぁ探さないで!!!