Good morning.














朝。
目を覚ますと、いつもよりも暖かかった。
ぼんやりしている頭を必死で駆動させて、これまでのことを思い出そうとする。
視界はまだ良く見えない。
ただ、この懐かしい感じ。
なんだろう。


「    」


ゆっくりと回転を始めた脳に、低い声が入ってくる。
誰の声?
ただ、それまでの懐かしさがいっそう濃くなるだけ。


「    」


何度も、何度も同じ言葉を繰り返す声。
そのたびに胸は締め付けられる。
次第に視界がはっきりしてくる。
脳もやっとのことで回転を始めた。
目の前に、誰かの顔。
感じる人の体温に、あたしは誰かに抱きしめられていることだけ理解した。


りょ、う


たどたどしい声でその名前を呼ぶ。
口に出すと、急に意識がはっきりしだした。


「おはよう」
おはよう?
「どした?」
どうもしないよ。
「そうか」
うん。
「ん。」


低い声が脳に響く。


ね、涼
「ん」
さっきあたしが起きたばっかの時、
「ん?」
なんか言ってた?
「お前、寝惚けてたの?」
んー・・・うん。


涼はほんの少し顔を赤くして、照れている素振りを見せた。
あたしが出来るだけ涼の方に身体を寄せると、涼も回した腕に力を込める。
涼の体温と匂いに包まれる。


「あれね、」
ん?
「ずっと呼んでた。お前のこと。」
そっか。
「うん」
ね、もっかい呼んで。
「ん、何で?」
いいから。


彼は微笑み、あたしのことをきつく抱きしめながら
耳元で囁いた。
小さな声だったけれど、彼の魅力的な低い声は、
あたしの体中を駆け巡った。





そう、それはあたしの名前。






おはよう。




Fin.