未読メール:1




































私の ( ここ重要 ) 机に手をかけた宮森は、ありえないほど学ランが似合わない奴だった。
ちょうど暇を弄んでいた私は、適当に打った『サボりたいー』というメールの送信先を探していた。
その作業を中断されたことについては大して腹の立つわけでもなかったが、そいつがあまりにもでかい態度をとっていたことに腹を立てた。


携帯を手に、椅子に座ったまま横に座る宮森を見上げる、もとい睨みつけると、そいつは眉をしかめた。




、何睨んでんだよ」
「…別に」
「そんな低い位置から睨まれても怖くないんだけど」
「宮森が高いんだっつの」
「まあ、いいからノート写させろ。」
「…」






悔しくも言い返す言葉が見つからない私は、宮森をまた一瞥して携帯に目を戻す。


あー、誰に送ろうかねえ。
カズ…授業中でも笑顔で迎えに来るからダメ。
やま…アイツは別高校だからなあ。
洋兄…いや、絶対寝てる。そしてもし私が起こしてしまったら殺される。
直人…変態だからダメ (え
弘樹…真面目だからそんなメール送ったら超長い説教が始まる。


残念ながら、私の携帯には女子の名前はほとんど入っていない。
というか女子とのメールははっきり言って面倒臭い。
かと言って男子の名前も今挙げた人たちしかない。
…あれ?






「おい、人の話は聞けって」
「…宮森。」
「あ?」
「宮森のメアド、私知らなかったっけ?」
「え?…あ、あぁ。そういえばに教えた覚えねぇなあ。」
「カズもやまも洋兄も直人も弘樹も入ってるのに、宮森だけって。ミステリーじゃん」
「っつかなんで俺だけ苗字呼び。」
「リョウって語呂が悪い。」
「ヨウも同じもんだろ。」








変なの。洋兄とかに聞いてあったつもりだったんだけど。
まあ知っておいて損は無いから。


私は立ち上がって宮森の前に立って、宮森の胸ポケットから携帯を取り出す。




「リョウイチゼロゼロイチ…安直なメルアドだねえ」
「お前今のセクハラ。つーかって立っても小さいのな。」
「宮森Mっ気あるんじゃないの?」
「いや、俺はS」
「そーいうことを女子高生に向かって言う時点でセクハラだから。」
「お前が女子高生を名乗るのは100年早い。」




100年経ったら女子高生でもないから。




「っと…み、や、も、りっと。」
「いや。つーかそんくらい名前で入れろって。貸せ。」
「えぇー」
「洋と被るだろ。おし、送信。」
「何やってんの」
「え?俺の携帯に送信。俺もお前のメアド知らないし」
「勝手に人のパケ代使うなっつの。」
「メール一通分なんてたかが知れてるって」
「…もちろん文字入れてないよね?」
「さあどーだか。」




嫌な予感がした私は、宮森に自分のを取り上げられてちょうど手に残った宮森の携帯を見る。


ヴヴヴヴ…


「あ、やっぱりマナーモード。」
「嫌いなんだよ、音鳴るの。」
「えーっと、受信メール…え?」
「どした?」
「ねえ宮森」
「んだよ」
「お前が送ったのって、コレ?」
「そう」






『from:未登録
  sub:だよー
 
 記念すべき初メ☆
 よろしくねー
 ちなみに、リ
 ョウの事好きです
 これ、告白ですか
 ら 笑
 返事待ってるよん
 ( ´ ▽ ` )ノ 』



「キモ…」
「なんで」
「っていうか何この内容?」
「ん?俺がから頂きたいメールの内容を再現」
「大馬鹿め」
「嘘じゃないんですけどー」
「ふーん…じゃあ私も」




私は自分の携帯から送られたメール(制作者宮森)への返信画面を呼び出し、メールを打つ。
打ち終わって、宮森の携帯を乱暴に閉めたと同時に、宮森の持つ私の携帯が鳴り響く。
着メロはケ○メイシ。


「お、いいじゃんコレ。」
「でっしょー?宮森もコレにすれば?っつかしろ。強制。」
「いや意味分からんし」
「お揃いがそんなに嫌?」
「えっとー…あった。」




『from:宮森
  sub:涼ですが何か?

 俺からも初メ。よろし
 く。
 ちなみに俺も
 事好きだし。
 っつーわけでカップル
 決定?笑       』




「…コレ返事として受け取っていいわけ?」
「宮森のお好きなように。」
「んじゃあそうする。あと名前で登録して名前で呼べば?っつかしろ。強制。」




宮森…いや涼は私に携帯を返して、かわりに自分の携帯をひったくる。
涼がここから離れる時に頬に軽くキスしていったのを認識するのに少し時間がかかった。




「涼?」
「大丈夫。誰も見てないって。じゃな、。」
「そういう問題じゃないって。」








涼は顔の横で手をヒラヒラさせながら自分の席に戻っていった。
おー、改めて見ると格好イイもんですな。
携帯にまた目を落として、何気なく送信メールを見た。送信は2通。
…え?2通?1通はさっきの涼作のメールでしょ、あと1通は?




『to:カズ
 title:無題


 サボりたいー 』









…げ、ヤバイかも。





-END-