失なった恋







































「てゆーか、何で居んの」


「…なんとなく」




1時限目から授業をサボるとか、そんな余裕のある奴は居ないだろうと思ってた。(それこそ俺はそうだが)
だから今日は一人でのんびりできると思ってたのに。
俺より先にタンクの上で青空を見つめていたのは、
―俺の幼馴染み、兼片思いの人。
俺を見つけるなり、は嫌な顔をして場所を少しだけ空けた。(意外と優しい奴だ)


寝転がっているの隣に座ると、はそっぽ向いた。




「なあ、何してんのって」


「別に何も」


「…髪切った?」






社交辞令として、冗談として口にしたつもりだったのに、はサッとこっちを振り向いた。
俺何か悪い事言ったか…?




「…切ったよ」


「どしたの」




しまった。口に出してから俺はやってしまったと思って舌打ちをしたが、もう遅い。
はまた不機嫌になったかと思えば、こんどはくしゃっと笑って俺を見た。
の笑顔は可愛いけど、今のはなんだか切なくて、こっちの胸が締め付けられた。




「女、。華麗に失恋しました。」


「…っは?」




起き上がってさっきの笑顔を浮かべたまま、俺に向かって軽い調子で言った
言い方そのものは軽いものだったけど、その内容がそんなもんじゃないのは俺にだって分かった。




「北尾先輩にね、フラれてきたよ。」


「おま…マジかよ」




はかず先輩のことが好きで、だから俺はずっとに“片思い”だった訳だが。




「彼女がね、いるんだって。もう4ヶ月。」


「…」


「知ってたんでしょ、宮森?」


「あ…ぁ」




なら早く言ってよね。は俺の方を見ず、空に目を向けて言った。
―上を向いて歩こう、涙がこぼれないように…




「まあ、駄目だって分かってたからね。だから、早く振られて良かった。」


「…」


「だから、私決めたんだ。」


「…何を?」


「もっと恋して、もっともっと綺麗に、可愛くなって、北尾先輩を見返してやるんだ。」




そこまで一息で言うと、はまた寝転がった。俺のすぐ横に。
俺はの方をみることは出来なかった。
悲しみに似た感情でいっぱいになっているはずなのに、ときたま嬉しがっている俺が顔を出す事にムカつく。




「だから…早く新しい…っ…恋を…見つ…け…っ」




途中から涙声になった
その声を聞いたら、嬉しがっている俺は消えて、代わりに罪悪感だけが残った。




「あのさ、」




はこっちを向かない。








「…俺とかじゃ、駄目かな?」












あの時のしつこい日差しと、赤い目でこっちを向いたが忘れられない。














-end-