その子は、2時間目の終わりに、弘樹達と話していた俺に話しかけてきた。
さぼりびより?
-大和君のさぼりびより-
「大和…君。」
「ハイ?」
「次の時間、ちょっといいかな?」
そう言って彼女は、人差し指で控えめに上を指差す。
俺は頷いて、また弘樹に視線を戻す。
「大和、あの子なんだよ?」
「んー?ちゃん。隣のクラスの子。」
「なんでそんな子が大和先輩に話しかけるんすか」
「しかも結構可愛かったしー…」
上から順に弘樹、涼、直人。
「あーもう、うるさいなー!弘樹達には関係ないだろー?!」
「何を言うか!あ、あの子紹介してくれない?」
「弘樹に紹介するわけ無いさ。」
「ヒドッ…」
結局ちゃんの話はそこで終わった。まぁ俺も、しつこく詮索されても困るしね。
彼女とは別に恋人同士なわけじゃないし。サボリ仲間って言う…微妙な関係。
「ちゃん?待った?」
「待ってないよ。」
…沈黙。
ちゃんに呼ばれて屋上に来たはいいけど、ちゃんの表情がなんか思いつめてるような…
上手く言えないけど、考え込んでるような表情で話しかけ辛かった。
…と思ったら、ちゃんが話し始めた。
「あの…さ。」
「うん?」
「私、明日引っ越すんだ。」
「…どこに?」
「東京。」
「…遠いね。」
「うん。」
思いもしなかった。ちゃんに、俺は少なからず恋心を抱いていた。
だからほぼ毎日、こうして屋上で二人でいる時が幸せで、ずっとこのままだって、一人で思ってた。
引っ越すなんて、思えなかった。
「そういうことだから、二人で話すのもコレが最後、だね。」
「うん」
「大和君?どうかした?」
「なんか…ちょっと寂しくなるね。」
「ありがとう。大和君に会えてホント良かった。絶対忘れないでね。」
「もちろん。」
「じゃあ…私今日早退してそのまま向こう行くから…」
「…」
「また…会えるといいね。じゃあね。大和君。」
「うん。また…」
ちゃんはそのまま俺に背を向けて行ってしまった。
「行くな」って、その一言が言えなかった。悔しかった。
悔しくて悔しくて、俺は一人で泣いた。
気づけばもう下校時間で、ずーっと屋上で泣いていたみたいだった。
やっとわかったんだ。こんなにちゃんの事好きだった。
ちゃんとは、もうそれからずっと会えていない。
――――――
「大和!そろそろスタジオ行くさ!」
「おー。」
あれから5年以上経った。俺らはオレンジレンジとして活動していて、TV出演もよくしていた。
俺はさっきまで楽屋で寝てて、学生時代の夢を見ていた。
「ちゃん元気かなー…」
クックッと意味も無く笑って、俺は楽屋を出た。
ドアを開けたその時、人とぶつかった。俺より頭1つ分小さい、女性だった。スタッフかな?
「あっ…すみません。」
「いえ、俺もいきなり開けたりして…すいません。」
「あ、オレンジレンジのYAMATOさんですね?」
「ハイ。」
「もう皆さんスタジオでお待ちですよ。」
「あー…スイマセン。」
「いえ。じゃあ私はこれで。」
「ありがとうございます。」
横を通って行った彼女の名札が目に入って、俺はその場にフリーズした。
“ ”
「…まさか、ね。」
俺は呟いて、スタジオに向かう。その時今のスタッフが呟いた一言は、耳に入らなかった。
「大和君…元気かなぁ」
-END-
前サイトで初期の頃。
タイトルセンスがない。(今もだけど
「続きを書く」とか言いながらも、もう…半年くらいになるかも。