さくら、散り












































「あ、大和。さくら」




俺と手を繋いで歩いていたが、いきなり足を止めた。
そのまま前に歩き出そうとした俺の手を少し強引にひっぱる。




「…さくら?」




の見上げている先を見てみれば、もうそれは「元さくら」としか呼びようの無い、木が。
つい最近までは淡いピンク色だったであろう枝は、今や薄緑の葉とさくらの花びらの残骸がぽつり、ぽつり、とついている。


「みーんな、落ちちゃったんだ。」


「もう4月も終わるから。」


「もっと早く来れば良かったね。」


顔を赤くして俺を見つめるは、どうしようも無いくらい可愛くて。
なんだかこうしてると子猫を連れて散歩しているような気分になる。


「ごめんね、忙しかったから。」


「ううん。大和はそれでいいの。」


“でも早く帰ってきてね”みたいな表情でが言う。
俺だって、早く帰ってきたかったよ。その言葉を何故か飲み込んで、を抱きしめた。


「来年は、ちゃんと見に来ような」


「うん。」


「3人で。あ、もしかしたら4人、それ以上かも。」


「え…?」


なんだか分かっていないような顔のをぎゅ、と抱きしめた。


「俺、女の子がいいな。」


の顔が少し赤くなったのが目の端に見えた。
可愛い。


「私、」


“まだ作りたくないな”なのか“男の子が良い”なのか、その先は分からなかったけど。
が言葉を言い終わらないうちに軽く口づけた。











「ん?」


「愛してる」


「私も」










-end-