流れる雲。


跳ねる泥水。



















雨降ル公園デ

























「雨か…」




こんな気分の時にはぴったりだな。と独り苦笑して家を出た。
傘を持たずに。
出掛けに、涼が俺を不審な目で見たが、俺は無視をした。








しばらく歩いて、山公へ行く。
公園全体が、茶色と灰色の混じったような色に染まっていた。
みんなでバスケしたバスケットコートも、
振られて泣く弘樹を皆で慰めたあのベンチも…




あの時の弘樹の気持ち、今の俺にも分かる。




弘樹のように、同じベンチに座って、上を見上げた。
冷たい雫が、顔に当たる。
自分が泣いていると言う事を否定するのに、この雨は十分だった。




携帯を見た。着信ゼロ。
毎日あいつから来たメールは、今日はもう来ない。
電池パックを外して、携帯をバスケットゴールに投げた。
リングに当たって跳ね返り、地面に落ちる。




雨を受けながらも鈍く光っているそれを一瞥して、今度は電池パックを投げた。
またリングに当たって、反対側に落ちた。




俺はため息をついて、またベンチに座る。
こんどは、組んだ足の上に肘をつき、手の平に顔を乗せた。
下を向いたら、生暖かいモノが頬を伝って。地面に落ちた。
ソレは、泥水を跳ね返している雨に混じって見えなくなった。








「洋、下手だねえ」




前から女の声が聞こえて、顔を上げた。
女は、俺の携帯と電池パックを拾い上げて白っぽいハンカチで拭いて、俺に差し出した。
同じクラスの。女友達の中では、一番親しい奴だと思う。




「…?」


「携帯、落ちてたよ。…あ、投げたんだっけ。」


「…嫌味な奴」


「何とでも言え」




は隣に座って、俺が入るように傘を持ち直した。
俺はの肩に手をかけ、こちら側に引いた。
反動で倒れこむの肩に、あごを乗せた。
俺がを抱きしめる形になってしまったが、今の俺はそんなこと考える余裕は無い。




「ちょっ…洋?」


「しばらくこのままでいろ」


「洋…?」


「頼む…ッ」


「泣いてんの?」


「泣い…てねぇ…ッ」






は、それきり何も言わなくなった。
俺は、そのまま泣き続け、
公園の中の灰色は、ほんの少し薄れた気がした。







-END-










あー…泣いちゃいましたか。
洋さんみたいな人が泣くの、格好いいんですよ(力説