ラストワン
白地に濃い赤でいちごが描かれてる包み紙。
いかにもキャンディーですって言うそれの両端を引っ張ると、ほとんど抵抗も無しにぱらっと開いた。
中に覗く小さなピンクの粒を口に入れると、いちごのフレッシュな甘さとミルクの優しい甘さが口の中に広がる。
私はしばし、その感覚を楽しんでいた。
「、俺にも」
突如右側からサッと手を出したのは洋。
顔は雑誌に向けたまま、手だけを私に差し出している。
「やーだよ」
「何で」
今、チラッと目だけでこっち見たよね。
洋さん、それ世間一般では「流し目」って言ってね、酷く卑怯な技なんだよ。
「いっこだけね」
「さんきゅ」
洋の左手にいちごみるくの包みをポン、と置くと、雑誌から目を放さずに包みを開けて、口に放り込む。
世の中に、これほどまでにいちごみるくが似合わない人がいるのか、と思わせるほどのギャップに、つい笑い声を漏らしてしまった。
「…あ、あといっこしかないや」
「…ん」
また左手を伸ばす洋。
…あのね、そんな。最後のいっこを貴方に渡せと?
それだけは許せないね。たとえその目で流し目されようと、ね。
私は構わず包みを引っ張って開けて、口に放り込もうと…
「別に食ってもいいけど、結局は俺がキスでもらうんだからな。」
「…ふん。食べれば?」
もしかしたらとは思ったけど。
洋にあげてしまった最後のいちごみるくの味は、やっぱりキスで私にも伝わった。
甘かった。このうえないほど、甘かった。
-end-
甘かったー 何
洋大好き。最近兄弟が増えてる気がする。
いちごみるくって美味しいよね。