冗談
傘に当たる雨の音が、耳に心地よく入る。
数十メートル先、大好きな人の姿を見つけ、俺は少し足を速めた。
ぱしゃ、ぱしゃ。
―あ、怯えてる?
まあ、こんな暗い道で足音が近づいてくるのが聞こえたら、怖がるのも無理はない。
「」
ばっ、と言う感じでが振り向いた。
一瞬、恐怖に怯えた表情をしていたものの、その顔は一気に緩んだ。
「洋…」
はぁ、とため息をつく。
きっと安堵の意味だろう。
別にとは付き合っていない。
でも、名前呼びっていう、そういう関係。
俗に言う、友達以上恋人未満?
「びっくりした?」
「ほんと。ストーカーかと思った。」
俺より(当たり前だけど)背の低いは、淡いオレンジ色の傘に隠れて、顔がほんの少ししか見えない。
の髪の先に光る雨粒を見て、なんど抱きしめたいという衝動にかられたことか。
沈黙が続く。それも重苦しいものではなく、なんとなく居心地がいい。
「、雨好き?」
「ぅ、えー?」
いきなりの俺の質問に、変な声をあげて俺を見つめる。
可愛いことするなよ。押さえが利かなくなるだろ。
「んー…好き、かな」
「どして?」
「…洋と一緒に帰れるから、かな?」
冗談だよー。とは無邪気に笑って、前を向いた。
冗談じゃなきゃいいのにとか、なんか。
そんな考えが頭の中に渦巻いて、俺もある種末期症状?
「俺も、好き。」
「ん?何で?」
「大好きなと一緒に帰れるから?」
冗談。と言ってキョトンとするの頭を叩く。
はなんだか慌てて、「だ、だよね、冗談だよね!」とか言って10メートルほど走っていってしまった。
俺は後ろからゆっくりの方に歩いていきながら、に聞こえないような小さい声で呟いた。
「…じゃないんだけど。」
弱気な俺の言葉は、傘の中の俺だけの空間に小さく響いて、消えた。
-end-
だからさ、なんでいつも洋兄は悲しいのかな。
雨だし。そんなイメージなのかな私の中で。
格好いいけどね。
もどかしいよね。(自分で書いて言うな
ごめんね。