PAIR
どんだけ美人なオンナが俺を口説いたってな、
どんだけスタイルいいオンナが俺を誘惑したってな、
お前には敵わねえんだよ。
「よーう」
階下から聞こえる、落ち着いた、それでいて俺に会う事を楽しみにしているような声。
俺はそれが彼女…のものだと悟って、顔が緩む。
顔の緩みをなんとか押さえ、窓から顔を出して下に呼びかける。
「。ちょっと待ってろ」
「うん」
アスファルトの地面が軽く太陽光を跳ね返して眩しかったが、今の俺にはそれ以上にその上に立つの眩しさに目が眩んだ。
透き通るような青のTシャツに、白のスカート…その組み合わせは一般的にどうあれ、にこの上なく似合っているし、2階からだとチラッとしか見えないが胸に光る銀色は、きっと俺とペアで付けてるネックレスだろう。付き合い始めの頃に俺がペアネックレスを一緒につけていて(今考えると寂しい)、それをに渡したものだ。
俺はほとんど外した事のない自分の分のペアネックレスをクッと左手で握って、顔のニヤけを出来るだけとめながら玄関に向かった。
「お待たせしました。」
「お待ちしました。」
顔を見合わせて笑って、を招き入れる。
2人でまっすぐ俺の部屋に向かう。涼が自分の部屋から顔を出して、怪訝そうに下へ降りていった。…悪ぃな、涼。
「久しぶりだな。ツアー終わってからも、中々会えなかったろ。」
「私の方もちょっと忙しかったしね。」
俺のベッドに座っているの横に座って、そっと口付ける。
最初は軽かったキスも、回数を重ねながら少しずつ深くなっていく。
会えなかった分を取り返すように。
「バイトだったっけ。確か…」
「ううん。バイトは辞めたの。ちゃんと正式社員ですー。」
「お、良かったな。働きたいって言ってたし。おめでと」
「ありがと」
の唇が俺から離れて、物悲しさを覚えた。
俺の隣にがいなかった時間が少しずつ溶けて無くなるように、俺の心も暖かくなる。
ふと、が部屋の中に目をやる。その目は、壁にかかっている写真に留まり、また俺に戻る。
俺が手を広げると、その中にが軽く飛び込んできた。俺の首にかかっている例のネックレスを手で弄ぶ。
「ちゃんと付けてるんだ」
「も付けてるじゃん」
「まあね」
こうして二人でいる時が、一番、幸せだ。
ふいに携帯のバイブが鳴る。
受信メール
From:涼
Sub:あのさ。
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俺、カズ先輩ンとこ行
って来る。帰りは遅い
方がいいよな。…やっ
ぱ泊まってくるわ。
ごゆっくり。
…最後まで悪いな、涼。
-end-
ペアってなんか、憧れるよね。
ペア…いいなー。
一緒にして一人でつけてたとか…寂しいな笑